| Branding | VI | Graphic design |

outline

■ クライアント

  アシストプラスアルファ


■ 実施期間

  2021年10月~


■ 体制

 D 笹倉
 Designer 笹倉
【 Web 】
  D 笹倉 + 佐山ウェブコンサルティング株式会社
  Designer BSH 会田
【 PV 】
  D 笹倉
  制作 2FRAME2

vision

富山市にある、アシストプラスアルファという建築会社。
現状のアシストプラスアルファには何が必要なのか、何をどう見せることで魅力を発信できるのかを一緒に考えて欲しいという依頼から、ブランディングが始動した。

アシストプラスアルファ(以下、アシスト)は、設計から施工管理まで行なう建築会社である。施工のほとんどが一般住宅だ。私たちが、アシストという会社に触れてまずわかったことは、「自社のプロモーションのために家を建てることはしない」ということ。これは当たり前のようでいて実は簡単なことではない。
お客様が本当にリラックスして日々を過ごすために、最適な家をつくる。企画住宅によるコストダウンを売りにした住宅ではなく、自社のプロモーションやブランディングのためでもなく、お客様ひとりひとりの話を聞き、それぞれの心地よい暮らしを実現するために家をつくっている。これはアシスト最大の魅力である。しかし、その魅力の伝え方をどうするべきか、建築に散りばめられた配慮や工夫といったビジュアルで現れない部分をどうビジュアルとして表現するのか。

伝えるべき魅力
アシストの家に訪れた人が、まず感じることは、その居心地のよさである。
それは、まるで実家に帰ったかのような居心地のよさであり、リゾート地へいった時のような清々しさだ。
この感覚は、日本の寺社仏閣に訪れた時のような心地よさに似ている。現代住宅であるにもかかわらず感じるこの居心地のよさは、住む人にとって最も強く抱く魅力だろう。
その、快適な環境を生み出す方法とは、どんなものなのか。人は快適さを理屈に置き換えて考えることはなかなかしない。だからこそ、「快適な家」「居心地の良い家」といった言葉だけではこの快適さの理由は伝わらない。
実際、アシスト自身も、来てみて感じてもらうことでしか魅力を伝えようがないと考えていた。
しかし、コロナ禍の社会の中で展示場へ足を運んでもらうことは非常に困難という状況でもあった。そのため、この快適性という魅力をビジュアルを通して伝えることが必須だった。

process

心地よさの理由
このアシスト最大の魅力である、”心地よさ”とはどういった原理によって生まれているのか。
その原理を紐解いていくことからプロジェクトは始まった。まず何よりも、際立って魅力的に感じたものは、家の中から見える景色だ。
ただ綺麗なのではなく、見えて欲しい景色は見え、見えてほしくないものは上手く隠れるように工夫されている。
それは、アシストの建築がどの景色を見るかという考察から着手するためだ。
その土地の最も良い特等席はどこにあるべきか。それがアシストの家づくりの出発点なのだ。
そして同じように気になることは、中から美しい景色が見えるとすると、外から中は丸見えになるのではないかという点。だが、景観と同じぐらいに通りとの関係性、人の視線の高さなど様々な点に配慮をおき、外からの視線を気にすることなく暮らせるプライバシー性を確立している。それらの「中からと外からの視点、視線」という点が”心地よさ”を作るひとつの方法であった。
それ以外にも、建築素材、設計上の間取りの工夫、風の通り道、季節ごとに取り入れる陽の加減など様々な点からの数え切れないほどの工夫がそこに隠されていることがわかった。
そして、これらの工夫や建築技法は決して、新しい建築技術やテクノロジー、現代的な設計によって生み出されているのではなく、日本人が古くから暮らしてきた住まいの知恵や工夫を取り入れることによって実現していることがわかった。
だからこそ、日本人である私たちにとって”心地よさ”という感覚を作り出すことができているのだ。

TERETTO
ある日、アシストの社長である澤本氏に家づくりについて話を伺っていた時のことである。澤本氏から不意に出た言葉が、とても印象的だった。それは「良い家というのはデザイン性の高い家のことを言うのではなく、上質な部屋着のような『てれ〜っと』した風合いの家だ。家というのは誰かに見せるためのものではなく、人が暮らすためにあるものだ。かっこいいのにかっこつけてない方が、かっこいいんだ。」という言葉だ。その言葉がとても腹落ちした。アシストの家は最初から魅力を伝えるための家でなく、居心地のよさを感じるためにつくられた家だった。その思想は、お客様や、まだアシストを知らない人たちに伝わってほしいと思った。
確かに、良い家とは建築家が見たこともない設計をした家などではなく、最新の技術やテクノロジーによってつくられた味のない家などではなく、暮らす人が日々を心地良く暮らせる家であることは当然だと思った。
そして、その話の中から「てれ〜っと」という言葉をブランド名としたアシストの家づくりを凝縮した社内ブランドを立ち上げた。アシストの家を一言で表現するなら、この言葉が最適だと直感した。
澤本氏の言う、上質な部屋着のような家づくりを実現するための法則をTERETTOというひとつのブランドの中にまとめた。アシストの家づくりに対する美学や哲学を噛み砕き、伝えることがアシストにとってのブランディングになるはずだと考えたからだ。

新しいロゴ
次に取り掛かったことは、コーポレートアイデンティティとしてロゴマークの一新だった。
旧ロゴは、開業当初(1998年)につくられたものであり、社長の澤本氏が一級建築士であることを売りにスタートした当初のイメージをまとったロゴだった。しかし、時代が移り現代の価値観において、建築士の等級ではなく家づくりに込めた哲学や、家そのものの魅力が求められる時代になった。
そんな中で、旧ロゴと、アシストの家づくりの空気感にギャップが生まれていると感じた。そのため、今のアシストという会社を表す表現を打ち出したいと考えた。そして生まれたロゴは、以下の内容である。

このロゴは、アシストの家づくりにおいての哲学である「お客様にとって心地の良い家」「ずっと住みたい家」という考えを形に込めた。屋根型のAが家を表している。αは結んだ紐を表している。これは家と人が結ばれるという意味を込めたものだ。
また、家づくりの美学として「不要な装飾をしない」というアシストの考えから、要素を削ぎ落としたビジュアルにした。新しい時代、これからのアシストを表す上で、アイコニックで印象に残るデザインとなった。

まとめ
今回のプロジェクトで、最も重要だったことは、魅力の整理を行なったということ。
アシストにはたくさんの魅力がある。アシストという会社を知れば知るほど魅力的で、優しさと愛情あふれる素敵な建築会社だと私たちは思った。だからこそ私たちが取り組むべきことは、この魅力を知るためのきっかけや、入り口を作ることだった。良いものは売れるという時代ではない。そのものの良さが伝わることが大切なことだ。この会社には、良いものがたくさんあった。この良いものがみんなに届いてほしい。みんなに知ってもらえると嬉しい。今はまだそのプロセスの途中だ。